amber


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「リフレッシュ休暇…ですか」

社会人になり早数年。
確かにここ最近は有給休暇なるものを取ることなく会社カレンダーの通りに働き通しで、それでもそれが当たり前になっていた哀しきかな社畜気質へと変貌してしまったは突然付与された休暇システムに呆然と呟いた。
働き詰めになりたい訳ではない。ただ、来週から突然1週間もの空白を与えられてしまえばどうしていいのか分からないだけだ。


「いいじゃない、私なんて学生の夏休み期間に充てられたものだから何処に行っても人だらけだったわよ」

唐突にして充てられる休暇に慌てて事務所へと戻り報告した。何事も滞りなく仕事を全うするには報告連絡相談の3つが大事だというのは社会人4年目のだって分かっている。
申し訳なさそうに伝えたに対して背中を叩いたのは同僚の女性だ。


「どうせ私達なんて皆同じような仕事をしているんだし、急ぎの仕事ぐらいはしっかり引き継ぐわよ。折角だし羽を伸ばしてらっしゃいな」
「ありがとう」

丁度時期良くボーナスも舞い込んできていることだしこれを機に海外旅行なんてものもいいかもしれない。パスポートは昨年同僚達と海外旅行に行ったおかげで期限もまだ余裕はある。
いい同僚に恵まれもう一度ありがとうとは微笑み、そしてその日の帰りはいつもと違い旅行代理店へと向かい―――



世の中そんなに甘い訳は無かったことを思い知る。
いかに平日だろうが、社会人が仕事だろうが直近でツアーなんてものに出会える事自体が稀なのだろう。
代理店のカウンターで少しだけ考えたもののこのまま手ぶらでは帰りたくもないなあ、なんて思っていると丁度手前にある国内旅行のパンフレットを手にとった。


「ここ、見ていただきたいのですが」

結局は国内の旅行へと目的地は大幅に変更となり、メインは温泉となったが何分風呂の好きなにとって別段何も苦ではなく。
一人だし折角だから長居もしてしまおうということで3泊4日で同じ宿をとりキャリー1つで向かうのだった。

それが、彼女の一つ目の不運。