――――時は移り。

此処、ボンゴレの有するとある場所では緊張に顔を強張らす人間が何十人と結果を今か今かと待ち構えていた。

今日はボンゴレファミリー直属独立暗殺部隊、ヴァリアーの入隊試験最終日である。これまでは適当に幹部の人間が独自に集めていたのだがここ最近の激務により大幅な人数増強を要とし、母体となるボンゴレが率先して試験を行っていた。
ヴァリアーの面々はこぞって異を唱えたが例のボンゴレリングを賭けた戦いの後監視下に置かれた彼らに抗う術は無く、結果XANXUSに忠義を尽くす古参と”ボンゴレ”という母体に忠義を尽くそうとする新規で内部派閥も出来上がっている有様でまさに冷戦状態となっている。

勿論、歴史あるボンゴレに所属することはそう容易いことではなく、並々ならぬ努力を携えてやってきた人間ばかりだった。
加えてヴァリアー入隊はファミリーに入ることよりも条件が厳しく狭き門である。多国の言語を話せる事は当然として、その他一番重要視されるのが殺しの能力であるからだ。


適性試験を終え、語学試験も無事に終了。
最初は頭脳派の人間も沢山いたわけだが次の属性試験、ならびに体力試験等により続々と怪我人、ないしは死者すら現れ結局は筋骨隆々の男達が多く残ってしまった。

後は合否の判断と、そして受かったものには更に何処へ所属かの希望面談がある。
ある程度能力のある人間は試験中に幹部の面々が自分の部隊へと引き抜いてしまったので残された彼らは己の力と運次第と言ったところだった。


「お前どこ希望すんの?」

合格通知を受けた人間は面接の為に違う部屋へと集められた。
此処までの努力が報われた男達は安堵から、恐らく明日から同僚になるであろう気楽に周りの人間に声をかけ始めている。


「そりゃー俺はスクアーロ様のいるとこだって。やっぱ剣士たるもの憧れるだろ。そういうお前は?」
「俺は雷なんだけどさ…まあ、でも本当はベル様のところにいきてーよ」
「そうだよなあ」

同性であっても、異性であっても悲しきかな思うところは同じだった。
勿論見栄えの問題で無いことは確かだが、それでも上司は少しでも優しそうに見えるほうがいい。如何に本性がどうであっても、だ。
そして、もう一つ。彼らの手元に配られているのは1冊の薄い冊子。何処の部隊に所属するのか、部隊長が己の隊に求める人格、スキルタイプ等。恐らく面接の参考にするものだろうが矢張り新人の圧倒的人気はスクアーロ率いる雨の部隊だった。


―――当時の面接官は後にこう語る。
特大級の雷が落ちてきたようだったと。


元気よく面接室にやってきた、二次試験まで及第点で受かった17の少女は「何処所属を希望しますか?」という面接官の本日何十回も合格者に対してかけた質問に目を輝かせて答えたのだ。


「試験番号1万とんで35番、!レヴィ・ア・タン様の雷撃隊を!熱烈希望いたします!」


ガタガタガタッ!

雷撃隊に求められるのは絶対的忠誠。例え深夜でも、入浴中だろうともボスであるXANXUSに呼ばれたのならば直ぐに動ける覚悟のある者。ヴァリアーにとって不利にな存在に成り得る可能性が現れたなら甘んじて死を受け入れること。
そんなブラック企業も怯えるような事を堂々と書かれたその部隊を希望する少女の言葉に椅子から落っこちた3人の人事担当面接官はその後、少女に3度同じ質問を浴びせたがその答えが変わることは無かった。


「レヴィ様の雷撃隊へ!是非宜しくお願いします」

冊子を力強く握りしめ彼女は笑みを浮かべ続けた。
、記念すべき雷撃隊入隊日である。

嵐の前の静けさ