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あんまり地図を読むのも得意じゃないもので、残念ながらそれを片手に放課後は並盛の街を歩くことにした。
こういう時に携帯があればアプリを使ってどうにかできるというのに。役に立たない携帯は今、家に置いてある。
紙の地図にはアバウトなことしか記載はされておらず、コピーをとってそこに最低限覚えておかないとなあっていう場所だけを色付け。
スーパーに、コンビニに、後は図書館。念の為に雲雀に借りている家と、あと、それから


「…あ」

黒曜が隣にあることをすっかり失念していた。
今まさに自分の居る場所は既に並盛を僅かに離れて、黒曜の地へと足を踏み入れていた。
手に持つ紙を何枚か捲ると、私の印刷したこの地図は少し古いものだったのか既に潰れているはずの黒曜ヘルシーランドも載っている。
ちょっと嬉しくなってそこにも色をつけてパイナップルのイラストでも描いてみる。…あれ、こんな形だっけ。まあいいか。

六道骸率いるメンバーが並盛に襲来するのも確か日にち的なものがあったような…なかったような。困ったな、流石にそこまで覚えてないや。
あ、でもそもそも私がいることでそんなストーリーがちゃんと進むとも限らない、のか。
そんなことをブツブツとぼやきながらも歩いていると、後ろからひょいっと知らない顔がのぞき込んできてばっちりと目が合った。


「おっ、まあボーダーラインか」
「…あの、」
「ねーねー、今暇だよね?俺達とお茶でもしない?」
「いや、あの」

緑色の制服に身を包んだ人3人に気が付いたら取り囲まれていた。勿論この世界に私の知り合いなんていない。

――ええっと、私、これナンパでもされて…るのかな。私の世界でもこんなこと言われたことないっていうのに!何てベターな!
笑いそうになるのを必死に堪えつつ、どうお断りの言葉をいれたら穏便にやり過ごせるか考えているもその間にも手を引かれてしまう。

流石に中学生には危ういこともされない、か。
私お金ないけどきっと男の子なんだし割り勘だとか野暮なこともきっと言わないだろうしお茶ぐらいなら別に、


「良い訳ねーだろ!」

瞬間、辺り一面真っ白になって私は誰かに手を強く掴まれた!