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(side*獄寺)

何で俺ばっかりがこんな目に合うんだ!
結局バッティングセンターに3人で行って、野球バカはそのまま居残り。
俺は10代目をしっかり家まで届けてさぁ帰ろうと歩いていた時だった。晩飯何にすっかなーなんて考えながら歩いている最中に、緑色の制服の奴らが並盛のヤツに絡んでいるのが見えた。


「今暇だよね?俺達とお茶でもしない?」
「いや、あの、」

喧嘩とかじゃない分余計にタチが悪かった。
それでもそいつが全然見知らぬ奴だったら俺は真横を堂々と歩いて通り過ぎる予定だったが、生憎俺の知る限り最近一番話題に出る奴だった。

押切、

いやもしかしたらアイツなのかと思うところはあったが、何にせよこの前は雲雀そっくりだったしまさか女の訳ないだろうと決めてかかったところはある。
それに、雲雀そっくりのが現れたのはここ最近の話で、押切の名前は入学当初から発生している。一応これでも調べたわけだから間違いはない。
それであっても、どうしてコイツはこうも俺の視界に入りやがる!

大体、押切も押切だ。「あ、じゃあ…」じゃねーよ!何考えてんだ。


「良い訳ねーだろ!」

ミニボムを撒き散らし粉塵を飛ばすとその中にいた押切を掴んで俺は走り出した。





「は…っ、ちょっ……と、」

息切れを起こした押切が停止を促し漸く止まる。
俺はまだ日本の事はよく知らねーけど流石に他の地区に入ればこの平和な並盛とは違った感じになることぐらい見てわかる。
地図を片手にした押切はそんなこと微塵も考えて無さそうだが。


「お前なぁ」
「いやー助かった助かった!どうしていいか分かんなくてさ」
「…はぁ」
「まあでもまだ中学生だしさ、本当にお茶だけの可能性だって」
「後ろに大人が控えてたらお前今頃誘拐されてたかもしれねーんだぞ」
「ああ…それは考えてなかった」

コイツは馬鹿なのか。
如何に日本が平和だからといってこんな危機感のない奴は流石に危険すぎやしねーか。
呆れて物も言えない俺に、押切は何を思ったのか俺の手を掴んでぶんぶんと上下に振る。


「獄寺がいい人で良かった。名乗ってなかったけど私、押切って言います!って呼んでね」
「っ、離せ! 何で俺がお前のこと」
「やあね、友達のおてて繋ぎも恥ずかしいの?」
「殺す!」
「やだーおっかない!」

見た目はいかにも勉強が得意そうな、そんな感じ。
お世辞にも美人とは言えず10代目の周りにいる女たちのほうが幾分か…って何を品定めしてんだ俺。
それでも将来は化けんじゃねーかって思える程にはまあまあ整っている。

俺がこんなことを思っているとも知らずに心の底から楽しそうに笑う押切に俺もそれ以上は怒る気も失せて溜息を付いた。…なんと言うか…調子が狂う。
雲雀の偽者のアイツも、この押切も、って名前のやつは全員こうなのか?


「…ハア」
「……明日焼きそばパン買ってこようか?」
「いらねーつってんだろ!」

さっき少しだけ褒めようとしたけど前言撤回だ。
ズキズキと痛む頭を抱えながらふと手を掴まれたということに気付く。


「何だ」
「あのう、面倒ごとついでに一つ頼まれたいのですけど」

家が分かりません。
地図を片手に何を言ってやがると突っ込む気も失せて俺は押切の手から地図を奪って奴の家を探す。
ごめんね、と申し訳なさそうに微笑むコイツの笑みを、俺はどこかで見た事がある気がした。

…小さい手だな