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漫画キャラによって与えてもらった家への帰り道が分からず漫画キャラに案内してもらうなんて経験、他の人は絶対経験することがないだろう。フフン。…年上としての威厳どこにもない。悲しい。

バカじゃねーの!なんてものすごく罵られながら何とか近くまで獄寺に送って貰った。
私の記憶にある獄寺では無かったけれど人の優しさに触れることなんてなかったから凄く有難くて感動した。いやこれが噂に聞くツンデレというものなのか。悪くない。

いやーそれにしても学生時代男の子と帰った事なんて1度も…あれ、そう言えば友達と帰ったことだって……ロクに…なかったような。
あまり思い返したくない事実にずぅんと気落ちしながら鍵を開ける、と。


「遅い」

突然飛んでくる声にいやもしかしてまさかそんなとかそう言う単語しか出てこなくて。
今日言って今日来るだなんて聞いてもない。
けれどリビングにあるソファで優雅に寝転がってる雲雀がぞんざいな態度で私を見下しているけれど部屋をお借りしてるのは私だからもちろんそれに文句を言う権利はなく。


「ごめんごめん。今日はちょっと散策に行ってて」
「…わざわざ迷子になりに?」
「失礼な!ちゃんと並盛マップも歴史も読んだんだから多少は分かるわよ」

いや実際のところ獄寺が居なかったら迷子になって私の家はどこですか状態になる所だったんだけど、何となく今ここで言うと恐ろしい気がして口をつぐむ。
さっさと部屋に入って制服を脱いで調達してきた部屋着に着替えて。

因みに前回私の愛をこめてつけた部屋”でざいなーずるーむ”からこちらに来て一週間程、私はあの部屋に戻れないでいる。
どういうタイミングでそうなるのかはさっぱり分からないので、こっちに来た時に大きなキャリーに色々詰め込んで来た訳だ。

他から見たら家出少女扱いになる所だったけど幸い誰にも見つかることなく済んだ。


「夕食、家で食べなくていいの?」
「問題ないよ。僕のことあまり子供扱いしないでくれる?」
「スイマセン」

どこから取り出したのそのトンファー。

思わず身構えながらも冷凍庫からハンバーグを取り出した。
月曜日の会社のお弁当になる予定だったそれは残念ながら暫く食べれそうに無かったのでこちらに持ってきたものの一つだ。
解凍しながらさらに作り置きしていたサラダも適当にちゃっちゃと盛り付けて、ついでにポテトまで大サービスしてはい終わり。

一人暮らしだったら手間をかけることもなくインスタントなんだけどなんだかんだ自炊が一番安い。


「お待たせ」

食卓に並べるとなかなかいい出来栄えだ。
写真に撮ってSNSに載せたい気分だけど生憎あの携帯は絶賛私の世界との繋がりを拒んでいる。
いや、カメラぐらいは使えるのかな。後で試してみよう。
当たり前だけどお皿とかも1人分しか(それでも雲雀のこの毎日使う訳では無い家にあることすら感動したけど)無かったのでご飯はもちろん雲雀専用だ。


「…」
「あれ、ハンバーグは苦手だった?」
「…いや」

ぽかんとしていたのは苦手なものだったからではなく私が本当にご飯を作れたことが意外だってことなのか。珍しい表情が見れたから役得役得。
つまり雲雀はハンバーグが好き、と。ちゃんと覚えておかなくちゃ。
見た目によらず可愛いとおもったけど口に出したらきっと殺されるし黙っておこう。


「いただきます」



(…箸の使い方綺麗だなあ)
「何見てるの咬み殺すよ」