06

今日は校外に少し用事があるということで後は彼らに頼んだはずだった。
とは言っても直ぐに終わるものだったし何より雲雀の個人的な用事だったのでいつもの学ランも草壁に預けて。

時間にして約1時間程度、並盛から離れただけのことである。
それでも少し遅くなってしまったしそろそろ新学期にむけて色々用意すべき物事もあったりと忙しかったはずだった本日の予定を思うと珍しくも少しだけ申し訳なくなりながら学校に戻ると、何だか色々様子がおかしかった。
いつもと変わらない平凡な日常が彼を出迎えはしなかった。


「…僕はいつの間にこんな熱烈歓迎されるようになったんだっけ」

いつもは自分の事に対して一線を引き常に怯えた様子だった筈の風紀委員が何故か一斉に雲雀の周りを囲ってきたかと思えば、こぞって自分の体調を案じている。
それどころか一生ついていきます!だなんて気持ちの悪いことをいう輩までいて、正直こいつら殺していいかぐらいに思っていたけど。もしかして遅れた理由が病院にいっているとでも思っていたのか。自分は其れほどまでに弱いと思われていたのか。

申し訳ないと思っていた気持ちが急速に薄れて行く中、雲雀は外野の言葉を無視し黙りこくった。…草壁に聞けば分かるかと彼の報告を待つ。


「…委員長!頭の具合はどうですか!!」

他の風紀委員をかき分けて雲雀の前へ来たと思った副委員長の開口一番のその言葉に珍しくピキっと青筋が入ったのを自分で確認した。


「覚悟は、いいかい?」





「…僕の、姿の?」
「まさに委員長だったんですが」

青アザが痛ましい彼らを足蹴にしながら話を聞き纏めるとこうだ。


「僕の姿の奴が屋上にいて、そいつが頭痛を訴え、草壁がそれを背負って保健室に連れていったと」
「はっ、……ぐぁ!」
「…僕の学ランは」
「すいません!委員長だと思っててっきり」

邪な考えのやつがいるのか、はたまたあの最近の問題児共の誰かなのか。
どうやら愛想を振りまいた雲雀の偽者がこいつらを魅了してしまったみたいでさっきのは自分じゃないと主張してもいつもの怯えた様子は消え去ってデレデレしている。
まったくもって不愉快極まりない。


「…もういい。保健室に行ってくる」

埒が明かない。もう、この際偽者に関してはいい。
だけど学ランだけは代替品もないし返してもらわないと困る。肩に重みがないと落ち着かない。


「行ってらっしゃい委員長!!」
「お気をつけて!」
「全員後で咬み殺す」

偽者に関してはもうどうにもならないとなれば諦めもつくだろうが、しかし廊下を歩けばさっき背負われていただとか少し微笑んでただとか群れを成す草食動物共の声が気になって仕方ない。
絶対咬み殺す。

それと草壁には後でもう少し名前の通り壁になってもらおう。そうだ、ほかの人たちもこれを機に少し特訓で相手もしてあげなくちゃ。
我ながらいい考えだなと思いながら、保健室のドアに手をかけた。